2010年1月10日 沖縄タイムス社説をリンクします。 [針路2010]格差と貧困 新たな扶助で底上げを 厚生労働省は昨年、国民のうち低所得のため生活の苦しい人がどれだけいるかを表す「相対的貧困率」を初めて公表した。2007年は15・7%、低所得家庭で育つ18歳未満は14・2%だった。さらにひとり親家庭の状況は厳しく、貧困率は半数以上の54・3%に上った。 国民1人当たりの所得を高額な人から順に並べ、真ん中の人を中央値とし、その半分に満たない人の割合を貧困率としている。07年の中央値は228万円で、半分の114万円未満が貧困とされている。 1人当たり所得が200万円ちょっとと全国平均の7割、母子家庭の比率が2倍の沖縄は、「全国の倍近くの子どもが貧困状態に置かれているのでは」と推測される。 昨年刊行された「子どもの貧困白書」(明石書店)の帯に、「給食のない夏休み、体重の減る子がいる」 の文字が刷られていた。少々オーバーなキャッチコピーに思えたが、1日の栄養源が給食だけという子がいることは、現場ではよく知られているという。朝食を 食べさせてもらえない子のために、おにぎりを持参する教諭の話を思い出した。 08年度に就学援助を受けた県内の児童・生徒は15・2%、09年度に授業料減免制度を利用した高校生も6月時点で9・7%と、いずれも過去最多。全国学力テストで3年連続最下位という結果は、脆弱(ぜいじゃく)な生活基盤と無縁ではない。 子どもをめぐるデータの根をたどると、経済的困難という地下水脈に流れつく。 全国より早く進む未婚化も経済的要因が複雑にからむ。 県が05年の国勢調査を基にまとめた資料によると、50歳時点で結婚していない「生涯未婚率」は男性のおよそ4人に1人と高水準で推移する。 未婚化・晩婚化は先進国共通の流れで、生涯を独身で過ごし、子どもを持たない人生を選択する人も珍しくない。それはそれで一つの生き方なのだが、沖縄の状況から見えてくるのは、ライフスタイルの多様化とは逆の選択肢が限られた現実だ。 若い未婚者のほとんどは、いずれ結婚したいと考えている、と各種調査は分析する。一方で非正規で働く男性の結婚は、正社員の半分にとどまるという数値がある。 失業率が7~8%と全国の2倍、仕事があっても非正規の割合が4割と全国一高い県内で、そもそも結婚の見通しが持ちにくい、別の側面が浮かび上がる。 所得や失業率の問題は今に始まったことではないが、県内部での格差の拡大、その固定化が新たなひずみを生んでいる。共同体がうまく機能していた時代と違って、貧困が直接個人にはねかえるのだ。 ひたすらに本土の後を追った沖縄振興計画は、社会資本や産業振興に重心を置くあまり、地域社会やくらしへの目配りを欠いてきた。 親が子をサポートできず、子も親を支えられない。その閉じられたサイクルに穴を開けるには、相互扶助の仕組みを公の責任の下、つむぎ直す必要がある。進むべきは中流層を増やす底上げの政策だ。 |
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