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[オキナワ・子どもの今](6)<非行> 荒れる心 さみしさ抱え 愛情求めて居場所探し

2010/03/24 13:27 に Naofumi Nakato が投稿
2010年2月26日 11時25分
 沖縄は少年非行が全国よりも高い水準にあります。刑法犯で県警に摘発、補導された未成年者のうち、中学生が占める割合は6割以上と全国ワーストです。ただ、子どもが荒れる背景には必ず理由があります。学校や児童福祉の関係者たちは「非行の子どもたちの大半はネグレクト(養育放棄)の環境で育っていて、その背景には貧困がある」と指摘しています。子どもたちは、さみしさに苦しんでいます。学ぶどころではない子も少なくありません。少年非行の背景を追い、親子支援の在り方を考えます。(社会部・嘉数よしの)
 午後10時すぎ。県警の少年補導職員が、那覇市内のカラオケ店に入った。来店者リストに目を通し、薄暗い個室の中をのぞきながら回ると、ソファの上で歌い暴れる若者たちを発見。明らかに未成年に見える子も含め、5人の男女がいた。

 ドアを開けると、強烈なたばこのにおい。机の上には、ビールやチューハイの缶。補導職員が年齢を尋ねると、男性2人は成人、女性3人は未成年。1人は「小4です」と答えた。

 小4の女の子は、18歳の姉とともに来ていた。「ごめんね、眠たいよね」。遊びたかった姉は妹を気遣っていたが、妹はぼーっとした様子。補導職員は「お酒飲んだ? たばこは誰の?」と問いただした。成人男性が「おれたちだけしかやってない」と説明。確認したところ、女の子たちは、酒やたばこには手を付けていなかった。

 補導職員は連絡先や保護者について尋ねながら「なぜ未成年がこんな遅い時間にここにいるの。深夜徘徊(はいかい)だよ」と注意する。保護者にも連絡したが、女の子たちの親は遊んでいる事実を知っていた。迎えには来なかった。

 一緒に来ていた高校生の女の子が「悪いことしてるって分かってる。だけど家にいたらさみしいのに」と打ち明けた。

 両親を亡くしていて「何するのも一人。めっちゃさみしいんですよ。家にいたくない」。苦しそうな女の子に、補導職員は「それでも、こんなことよくないでしょ。しっかりしなさい」と諭した。そして、そっとメモを手渡した。「これが連絡先だから。さみしくなったら電話しなさい」

 女の子は「電話するからね」とほほ笑み、家路に就いた。

■あふれるブログ

 「酒飲みたい♪ 女3人です。今年じゅーななです」

 「メッチャ暇だし。ドライブ連れてってー」

 「今日暴走あるか分かる方いませんか」

 若者が利用するインターネット上の掲示板やブログには飲酒や喫煙、暴走行為を欲する子どもたちの声があふれている。一見、何のためらいもなく求めているように見えるが、冗談とも本音とも取れる文体から、焦りやいら立ち、さみしさが垣間見える。

 ある女子中学生のブログにこう書かれていた。

 「あぁーもう真剣ストレスたまりすぎでやばーい。自分の気持ちが伝わらんかったらいらいらしすぎて泣いてしまうわけよ(笑)酒とか見たくないし、たばこもやめたーい」

 「中学生って縛られすぎっしょ。楽しみとかないし疲れるだけさ。何がしたいのかな~。学校も頑張りたいけど疲れるよ」

 那覇市内の中学校で生徒指導を担当する教員は「問題行動のある子どもたちは、さみしさを抱えている」と語る。言動が荒くなっていく子と話していると「親がしばらく家に帰ってこない」と漏らし、胸が締め付けられる思いになったという。

 「小さいころから愛情に飢えていると、中学生になれば荒れる一方でどうしようもなくなってしまう。仕事や生活するために必死で、余裕がない家庭も多いが、もっと子どもに愛情を注いでほしい。幼少期が大事」と訴える。

■事件に無力感も

 「あいつを止められなかった。救えなかった」。子ども支援にかかわる男性は、無力感でいっぱいと打ち明ける。「小さいときから見ていた子が、中学生を傷付ける深刻な暴力事件を起こしてしまった」

 母親にかまってもらえず、小学生の時からバイクを乗り回したりして荒れる様子を目にしていた。いつも「落ち着く場所がない」と話していた。

 一緒に出掛けたり、音楽を楽しんだりするうち、穏やかになった時期もあったが、成人しても不安定で定職につくことができなかったという。自殺未遂をしたこともあった。

 「彼女も友達もいたけれど、人に嫌われるのが怖くて、本当の自分を見せられなかったと思う。人とうまくコミュニケーションを取れず、子どもの時から年下には支配的な傾向もあった。彼がやってしまった犯罪は絶対に許されない。だけど、なんとかしてあげないと、と思う」

 子どもたちの非行は苦しみやさみしさの表れだ。子どもを守る大人、社会がなければ、連鎖は断ち切れない。

低年齢化 高い再犯率
刑法犯少年

 刑法犯で県警に摘発、補導された未成年者のうち、中学生が占める割合は、64%と全国ワーストだった(2008年)。全国平均の38%に比べ、26ポイント高い。飲酒や喫煙、深夜徘徊(はいかい)などで補導された不良行為少年も多く、少年人口1000人当たりの人口比で比較すると、飲酒は全国平均の6倍、深夜徘徊も2倍に上る。

 県警少年課によると、08年の刑法犯少年1735人のうち、窃盗は65.5%(1136人)。中でも多いのが、オートバイや自転車などの乗り物盗と万引で、窃盗犯の7割を占めた。

 低年齢化も目立っており、刑法犯少年のうち小学生は114人、中学生は1111人で、小中学生で全体の7割を占める。共犯、再犯率も高いのが特徴だ。

 また、犯罪少年の非行の背景として保護者の「放任」の多さが目立つ。「干渉しすぎ」や「でき愛」は決して多くない。

 元児童相談所長の山内優子さんは「沖縄は貧困から派生するネグレクト(養育放棄)が、子どもの非行へとつながっている」と指摘する。「親の責任といっても問題は解決しない。学校や地域、専門家が連携して家庭を支援していかなければならない。地域も頑張っているが、全小中学校で実効性のある家庭支援ができるよう、行政に支援してもらいたい」と話す。

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