障害者虐待防止法で学習会 危機管理 支える側にも

2011/11/13 21:46 に Naofumi Nakato が投稿
東京新聞2011年11月13日

 「もし障害のあるわが子が虐待されたら」。こんな事態を防いだり、直面した際の対応を探ったりする学習会が千葉市文化センターで開かれ、切実な不 安を抱える母親たちを中心に県内外から約70人が参加した。6月に成立した「障害者虐待防止法」が来年10月に施行されるのをにらみ、弱い立場の人々を支 える側にも危機管理意識が求められることが、あらためて浮き彫りになった。 (堀場達)

 「障害のある人への人権侵害をなくすために」と題した学習会の開催は、五月に柏市で起きた事件がきっかけだった。

 事件は、柏市の知的障害者の男性(28)が自宅で、同市のNPO法人から派遣されたヘルパーにほうきの柄で体をたたかれたり、麺つゆをかけた生米を食事として与えられたりしたもの。

  学習会では、被害者と法人の責任者、対応に当たった県の横山正博障害福祉課長、柏市の宮本治道障害福祉課長らが事件の経過を報告。被害者の母親は 「自分で表現することのできない人が人権侵害を訴えるのは難しい」「県の動きは早かった。しかし家族には何の情報も入らず、無力感でいっぱいになった」な どと、法人が改善策を示すまでの約三カ月間の苦しみを絞り出すように語った。

 これに対し、横山課長は障害者虐待防止法の意義や要点をかみくだいて説明。当事者家族に情報が伝わりにくい点について「都道府県は事業所を『指導する』立場。しかし、防止法によって、当事者に『寄り添う』対応が可能になる」と力を込めた。

 施設やサービスで虐待などの問題が起きると、行政は障害者自立支援法や社会福祉法に基づき、事業者に改善や防止に向け監査や命令などを行ってきた。防止法施行に伴い、行政の新たな役割として、現行法で規定のなかった虐待を受けた当事者への支援が加わる。

  この学習会を企画したのは、障害児が普通学級で学べる「統合教育」の推進運動を県内で進めてきた人たち。今回、問題を起こした法人が障害者支援に 懸命に取り組み、今後も必要とされる存在であることが再三にわたって指摘された。実行委員会代表で東京都職員の浦島佐登志さん(62)=船橋市在住=は 「一番いけないのは、自分のところでは虐待など起きないと思い込むこと」とあいさつして締めくくった。

 児童養護施設での虐待問題追 及にも取り組んでいる浦島さんは「特に意思疎通が苦手な知的障害者は『介助者の意に沿わない行動』をとることを常に想 定しなければならない。虐待は悪意がなくても『起こり得る』という危機管理意識を事業者や介助者が共有することが大切」と話している。

  <障害者虐待防止法> 障害者に対する虐待の予防や早期発見などを目的に、来年10月施行される。「身体的」「性的」、暴言などの「心理的」、長 時間の放置などの「ネグレクト」、不当に財産を処分するなどの「経済的」の5分類した障害者虐待を、施設の職員、職場での使用者、親などの養護者に禁じ る。虐待を見つけた人には通報義務が課せられる。市町村には虐待防止センター、都道府県には権利擁護センターが設けられ、虐待の被害者や養護者への助言や 相談に当たることなどが盛り込まれた。

障害児の親ら県内外から約70人が参加した学習会=千葉市中央区で

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