小中学校連携 人間性向上に生かしたい

2011/11/07 20:15 に Naofumi Nakato が投稿
2011年11月1日 琉球新報 社説

 中学校に進むと環境が大きく変わる。勉強や友達づくりがうまくいかず、学力低下やいじめ、不登校などが著しく増える現象がある。
 「中1ギャップ」と呼ばれる全国的課題だ。文部科学省の調査によると、その課題克服などに向け、小学校と連携した教育環境の整備を進める全国の市町村教育委員会が1276教委で72%に上る。
 小中の9年間を通した一貫教育や教師の相乗り授業など、具体的に取り組む1050教委のうち、96%が成果があったとしている。
 思春期を迎えた児童・生徒の発達段階に応じ、学校間の垣根を低くして生徒を支える小中連携の広がりは評価できる。
 地域の実情に応じた小中連携の望ましい形を見いだし、学力だけに偏らず、総合的な人間性向上に結び付ける努力を払ってほしい。
 文科省によると、小6に比べ、不登校の子どもは中1で約3倍、把握できるいじめ件数も倍になる。
 全国に先駆け、全域で小中一貫教育を導入した広島県呉市では、小中を一つにした「学園」が2校あり、中学生は7~9年生と呼ぶ。
 5、6年生の算数や国語などで、中学の教員が小学生に教える。スポーツなどを通した中小の異学年交流も進めている。
 学園以外の校区でも乗り入れ授業などを継続している。中学生は後輩たちへの思いやりを育み、小学生は中学進学時の不安が小さくなり、学校が落ち着いたという。
 導入から4年間で中学生の暴力行為が3分の1以下に、いじめの認知件数、不登校の生徒数も大きく減った。呉市は、全国学力テストの結果も伸びている。
 一方で全国的な課題も出てきた。小中連携は教師の負担が大きくなるため、増員が不可欠となる。小中の教師同士の連携が不十分などの声があり、学校統廃合が進みかねないとの懸念も出ている。
 県内では、那覇市が2016年度までの小中一貫校導入を目指し、2012年4月には神原小、神原中がモデル校として始動する。名護市は久志小中校の一貫校(緑風学園)を同年4月に開校させる。
 本土の先進市と異なり、那覇市の通学区域は1小学校から1~3校の中学に進む「網の目」状になっている分、一貫校として接続する中学に進めない生徒が出るなどの課題がある。きめ細かな対応で沖縄でも小中連携を根付かせたい。
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