2011年10月22日東京新聞社説 いじめなどの悩みを手紙で相談できる「子どもの人権SOSミニレター」が、今年も十月から全国の小中学生に配られる。心の痛みを把握できる絶好の機会だが、学校側の取り組み方がまだ弱い。 ミニレターは法務省が二〇〇六年度から始めた。各都道府県の法務局が返信先だ。例えば名古屋法務局には五年目の一〇年度、千二百通余の手紙が愛知県内の小中学生から届いた。 一刻の猶予も許されない内容もある。親から虐待を受けている訴えには「すぐ本人に連絡を取った」という。事実確認をし、子どもを納得させて児童相談所に保護してもらう救済措置を取った。児童相談所もまったく知らない事例だった。SOSレターでの相談が助けを叫ぶ子どもの救済のきっかけとなり、実際に役立った、その好例といえるだろう。 いじめ、虐待…など、子どもの人権侵害は依然後を絶たない。深刻なほど、本人は周囲に口をつぐみ、つぐむほど深刻さが増す。法務省の相談活動は、子どもと本来子を守るべき立場の人との、いわば仲立ち役だ。救済措置には権限や予算の壁などの限界もある。 便りに対し、人権擁護委員らは▽必ず返事を出す(する)▽秘密を守る▽子が元気や勇気が持てるきっかけづくり-に徹する。根気と誠実さが求められる作業だ。 SOSレターを最初に発案したのは一九九六年、山口県の法務局だった。国連の子どもの権利条約をその二年前に日本が批准したのが契機だ。手紙の方が悩みを打ち明けやすいとの判断や、自殺や集団暴行など子どものいじめが社会問題化し、当時の文部大臣が「深刻ないじめは、どの子にも起こりうる」と緊急アピールしたことなどが導入の背景にあった。 レター配布は、文部科学省や都道府県教委を通じて全国の学校に依頼する。だが学校側には当初反発もあったようだ。文科省の事業ではないからとの理由であるのなら、一体誰のための教育かと問いたい。教え子のため身を削って汗を流している先生も大勢いる。 「校長ら責任ある人がレターの意義をきちんと伝えてくれれば、配り方ももっと浸透するのに」との現場教師の不満が今も漏れる。大震災で被災し全国各地に転校したままの子どもも多い。避難先で誰にも悩みを相談できずにいるかもしれない。小さいが必死のメッセージを受け止めるため、レターを有効に生かす工夫と努力がほしい。 |
―子どもと沖縄にかかわる報道― >