教育と競争 竹田茂夫(法政大教授)

2011/10/11 5:37 に Naofumi Nakato が投稿   [ 2011/10/11 7:22 に更新しました ]
東京新聞【本音のコラム】 2011年10月6日
大阪維新の会の教育条例案は、政治家による教育目標の設定や解雇の脅しによる教育委員・教員の支配などを柱とするものだが、この恐るべき条例案はエンロンの職場統治を想起させる。 エンロンは1990年代に急成長した米国のエネルギー関連企業で、2000年末に時価総額で全米第7位という巨大企業だったが、そのわずか1年後に破綻した。エンロンは事業・会計手法・企業組織を通じて市場原理の徹底を図った。企業内外の社会関係すべてを市場取引・競争・効率性追求に還元しようとしたのだ。毎年の個人別業績評価でも下位15%の者は自動的に解雇された。職場は社員たちの生存競争の場と化した。
 条例案が通れば大阪の教育で同じことが生じるのは明らかだ。権力者や校長へのおもねり、スタンドプレー、足の引っ張り合いなどで職場は荒廃し、子供たちも雰囲気を敏感に察知するに違いない。しかも、企業の利潤追求のように教育目標は本来一元化できるものではない。新自由主義とは強権によって市場原理を社会のすみずみに押し広げようとする運動。条例案はまさにその一環だ。
 究極の効率的企業の幻影を追ってエンロンを破滅させた元CEO、ハーバード経営大学院卒・著名経営コンサル会社出身の経歴をもつこの人物は、証券詐欺等の罪で禁錮24年の刑に服している。 

Comments