司法による画期的な判断が出た。 両親が法律上の結婚をしていない子(婚外子)の遺産相続分を、結婚している夫婦の子(嫡出子)の半分とする民法の規定は、法の下の平等を定めた憲法に違反するかどうか。この点が争われた家事審判の抗告審で、大阪高裁が「差別を助長し違憲」とする決定を下した。 この規定をめぐっては、最高裁大法廷が1995年に合憲と判断している。大阪高裁は、違憲とした理由に、95年以降の家族生活や親子関係の変化、国民の意識の多様化を挙げている。 家族のかたちや結婚のあり方は時代とともに変わっていく。事実婚のカップルも増えている。 両親が結婚しているかどうかによって、生まれてくる子どもの権利に差がつくのは、明らかに不合理だ。子どもの視点から民法をとらえ直し、現代にふさわしい姿に変えていく必要がある。法による差別の解消を急ぎたい。 規定を合憲とした95年の最高裁大法廷も、裁判官の意見は割れた。15人のうち5人が違憲としている。合憲の判断はその後、最高裁小法廷でも踏襲されてきたが、違憲の反対意見も相次いでいる。 2009年の小法廷の決定も、小差の結論となった。4人の裁判官のうち1人は違憲とし、「婚外子かどうかは子ども自身ではどうにもならないのに、差別することは個人の尊厳と相いれない」と指摘。別の1人は「現時点では違憲の疑いが極めて強い」と補足意見をつけている。 昨年夏には、別の審判が大法廷に回付され、合憲とした判例が変更される可能性が出た。当事者間で和解が成立し、憲法判断には至らなかったものの、見直しの機運は高まっている。 問題は、立法府である国会の腰が重いこと。政府の法制審議会が婚外子の相続分を嫡出子と平等とする答申を出して、15年がたつ。 法務省は昨年2月に民法改正案をまとめている。にもかかわらず法改正が実現していない。法改正のもう一つの柱、「選択的夫婦別姓制度」の導入をめぐり連立与党内に意見の対立があり、足踏みが続いている。 家族や結婚の考え方は、人によって分かれる。にしても、すべての子どもが人権を損なわれることのないよう、社会全体で努力することに異論はないはずだ。 最高裁の判断を待つのでなく、国会は自らの責任を果たしてほしい。婚外子への差別をなくすため民法の改正に踏みだすときだ。 |
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