2011年11月6日 琉球新報 胎児も含めた各世代での沖縄戦体験が後の統合失調症やうつ、不眠を引き起こす晩発性の心的外傷性精神障害(PTSD)の実態が、沖縄協同病院の心療内科医、蟻塚(ありつか)亮二さんによる「沖縄戦PTSD」の研究で明らかになった。戦後の医療崩壊の中でほとんど行われなかった沖縄戦体験者の心の被害検証と治癒。蟻塚さんは「戦後66年間、体験者やその家族は、心の傷は開いたまま孤立させられてきた」と指摘する。蟻塚さんは5日、那覇市のJAおきなわ真和志支店で開かれた市民公開講座「沖縄戦の心の傷を追って」(沖縄戦・精神保健研究会主催)で報告した。 沖縄戦・精神保健研究会の代表、蟻塚さんは沖縄戦PTSDの臨床例として、5歳の時に戦場で母と死別したことが原因とみられる70代男性の不眠、14歳の時に戦場で死体を踏みながら逃げたことが原因とみられる80代女性の原因不明の足裏の灼熱(しゃくねつ)感などを紹介。心のケアの態勢が整う現在と違い「沖縄戦では何もしてこなかった。外国の占領下に置かれた特殊性も考えなくてはならない」と話した。 沖縄戦PTSDの特徴として(1)暴力的な死別の多さによる強い悲嘆(2)生活の場の喪失による「根こそぎうつ病」的体験(3)不眠やパニック障害(4)日本軍による人格侮辱と破壊(5)養育貧困などを通じた世代間伝達―などを挙げた。 戦時に家族の死亡や死体を目撃し、70歳前後になって不眠が発現する事例が多く、近親者の死による誘発も指摘する。妊娠初期の母親の戦争体験により子どもの統合失調症の発病リスクが高まるという海外の調査結果も紹介した。 同講座では、広島の被爆者の精神医学的調査に取り組む精神科医の中澤正夫さん、県内の精神保健に詳しいジャーナリストの山城紀子さん、保健師として生存者の精神保健に携わってきた県立看護大教授の當山冨士子さん、座間味島の「集団自決」(強制集団死)を研究する宮城晴美さんも報告した。 |
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