八重山教科書:「事実 子に伝えたい」

2011/11/13 18:18 に Naofumi Nakato が投稿
沖縄タイムス2011年11月10日 09時56分
 【八重山】「ルール違反」を放ってはおけない―。子どもの純真なまなざしと声援を背に、訴訟に踏み切った。八重山地区の教科書問題で9日、石垣市教育委員会に東京書籍版公民教科書の給付確認を求め提訴した市在住の小学生の母親2人が市役所で会見した。「本当のことをきちんと子どもに伝えたい」と、提訴に至った切実な思いを訴えた。

 ことし8月以降、連日のように報道された教科書問題。地区協議会規約の度重なる変更の末、非公開、無記名投票で選ばれた育鵬社版教科書で、いずれわが子が学ぶことになる。母親の1人は「新聞を読んでも意味が分からなかった。なぜこういう結論になるのか、疑問点はいっぱいあった」。

 事の成り行きを、ただ見守るだけでいいのか―。10月から保護者有志約15人が集まり、独自に資料を集め、教育行政の専門家も交えて学習会を重ねた。事実を把握するにつれ「育鵬社版を選ぶための『結論ありき』のルール変更だ」との確信に至った。会議録の非公開を貫いていた市教委への不信感も増した。

 教科書問題は政党の介入を招き、国は東京書籍版を採択した3市町の全教育委員による協議を「整っていない」と無効視。石垣、与那国2市町は育鵬社版の採択結果を変えようとはせず、地域の意思が無視されつつあると感じている。

 母親は「このままだと、主義主張の闘争や見解の違いで終わる。子どもたちは、わたしたち大人の姿勢を見ている」と指摘。「裁判で事実を明らかにした上でしか、納得できる結論は出ない」と力を込めた。子どもや家族にも理解を求め、提訴への賛同を得たという。

 原告側代理人の井口博弁護士は「裁判の中で被告が増える可能性もある。与那国町教委や、場合によっては文科省にまで広がる」。原告団についても同町の保護者を含め、今後増える可能性を示した。
Comments